こぎん刺しは『制約』があるからこそ生まれた。


こんにちは、kogin.netの山端です。
今年もあっという間に年末。みなさま、今年もお疲れ様でした!
冬になるとこぎん刺しについて熱く語りたくなる性分で、年末の締めは古作こぎんから学ぶ『制約』のお話です。2020年は青森市所蔵 古作こぎん刺し着物 写真集 コギン オモテ/ウラ 2冊組がシリーズ第3弾と第4弾、青森市所蔵 古作こぎん刺し着物 図案編 コギン図案集〜総刺し・モドコ・流れの伝統デザイン〜を創刊し〈2〉も今月発刊することができました。

新刊は青森県内の書店やwebショップで先行販売しておりますので、ぜひお手にとっていただければと思います!お店まで買いに行けない方は、ネット通販 津軽工房社しまやでお取扱いただいております。こぎん刺しの店kogin shopでは、年明けからバックナンバーや新商品と共にご紹介予定です。

 

古作コギンシリーズのご紹介はこちら!
kogin blog: 【こぎん新刊】写真集コギン〈3〉、コギン図案集〈1〉発売のお知らせ!
先日、koginbankさんの取材でもご紹介いただきました!


こぎん刺しは『制約』があるからこそ生まれた


今年は例年とは違う大きな変化のあった一年でした。3月に開催予定だったこぎんブックマーケット2020の中止から始まり、コロナ禍で自宅待機となり人との距離や店舗の営業方法、経済的な問題など多くの『制約』が生まれました。これまでとガラッと変わった世の中で自由に動けないストレスを感じている方も多いかもしれません。そんな時、先人の『制約』との向き合い方を学んで想像することで今を生きるヒントが見つけられるのではないでしょうか。

写真集コギンを撮影していただいた、カメラマン下山一人さん(プロ・フィールド代表)の美しいコギン写真と共にこぎん刺しの歴史を紐解いてみたいと思います。


先人の『制約』との向き合い方


津軽こぎん刺しが文献に登場し始める江戸時代後期から明治時代にかけては、農民にとっても制約の多い時代でした。

弘前藩の禁止令や自然の制約

・藩の財政悪化で階級により着るものまで指定、管理されていた。
・農民は木綿や絹、華やかな着物など外から入ってくる着物は贅沢品として禁止されていた。(農家倹約分限令)
・北国は木綿が栽培できないため、自家製の麻(苧麻、大麻)の着物のみに限られていた。
・麻は風通しが良い素材のため夏は涼しいが、一年の半分近く雪の中で過ごす青森では寒い。
・木綿の着物は丈夫だけど麻の着物は擦り切れに弱い。


そんな制約の中で、おそらく誰かが思いついちゃうんです。

…だったら、麻の布目を埋めればいいんじゃない?


そんな『制約』から生まれたアイデアはいい事づくしでした。

1. 布目を刺すことで機能性アップ

・麻の布目を糸で埋めると補強になる
・風通しの良さ防ぐことで保温効果が高まりあったかい
・ゴワゴワした麻素材が刺すことで着心地良くなる

2. 材料が手に入りやすいタイミング!

・税収に困った藩の殖産事業として織りや染め職人が京都から呼び集められていた
・藩の払い下げや北前船の交易品で木綿糸の原料やくず糸は手に入れられた
・麻布から木綿への移行期に生まれた弘前手織の技術や材料が好影響だった

3. 身に付けるのだから装飾性も大事

・ただ布目を埋めるだけではつまらないので、模様にしちゃおう
・遠くから見た時にも村の者だとわかるよう定型を決めよう
・魔除けや健康祈願などお守りの模様も入れよう
・他の人とは違う模様でオリジナリティを出そう
・自分だけが分かる目印で遊び心をプラス



4. さらに手仕事として定着、発展!

・母親や知り合いが教えて女の子は5〜6才から針を持って練習
・嫁入り道具として必携なので、嫁入り前の娘さんは腕に磨きをかける
・お祭りや祝いの晴れ着として刺し、汚れたら農作業着へ
・苦手な人に向けた代理制作サービスもあった
・衰退後、冬の農閑工芸として技術を活かす試みも

こうして一時期、津軽一帯にこぎん刺し着物が広がりました。現代に遺された着物を見ているとバリエーション豊かで制約の中でも楽しみながらこぎん刺しが発展してきたことがよくわかります。

『制約』+アイデアの威力

このように、こぎん刺しはまさしく制約のおかげで生まれた伝統工芸なのです。
とにかく贅を尽くしてお殿様や上流階級のために作られた献上品ではなく、民衆が制約の中でいかに機能性を保ちつつ自由になれるかを模索した証。

時は2020年に戻って。
マスクが品切れした際、キッチンペーパーやハンカチ・手ぬぐいなどで代用する方法を考えたり、手作りマスクが国内でブームとなり手芸店などで沢山の人が材料を求めたり。『制約があるなら作ればいい!』という現代の民衆が生み出した叡智、制約があるからこそのアイデアだと思うのです。先人が疫病に対峙した『アマビエ』を再発掘した流れもしかり。倒れてもただでは起きない…!たぶん日本人の得意分野なのではないでしょうか。


『制約』はこぎん刺しの母

失敗は成功の母と言われますが、『制約』はこぎん刺しの母と言っても過言ではありません。

感染症対策が当たり前になってきて、生活スタイルも変わってきています。これからは『制約』があるからこそ生まれるアイデアで世の中が変わっていくのかもしれません。僕自身、今だからこそ出来ることに集中していきたいと思います。

本年も沢山の応援をいただきありがとうございました!
2021年、皆様にとって明るい一年となりますように。

kogin.net主宰  山端 家昌〈ヤマハタ イエマサ〉

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