【青森の刺し子】津軽こぎん刺しと南部菱刺しの違い

こんにちは、kogin.netの山端です。
先日、南部菱刺しのこれからに関して、こぎん刺しの現状を参考にしたいと連絡いただき、電話取材していただきました。
その記事が2021年3月8日付のデーリー東北へ掲載されました。取材を通して菱刺しの現状やこぎんとの違いなど色々とお聞きできて、とても勉強になりました。

特別公開!北国に咲く、菱の花 ⑧・完

今回、特別に許可いただき『北国に咲く、菱の花 〜南部菱刺しのこれから〜』完結編の紙面を掲載できることになりましたのでご覧ください。
(デーリー東北新聞社から許可を得て掲載しています。)

論文「南部菱刺しの現状と課題」

川守田礼子准教授(創生デザイン学科)が、伝統工芸の南部菱刺しについて解説 | 八戸工業大学
そして、新聞で一緒に掲載していただいた川守田礼子准教授(八戸工業大)が菱刺しとこぎん刺しの現状を論文にまとめてくださっています。

南部菱刺しの現状と課題― 地域の伝統文化の継承と活性化に向けて ―

ダウンロードはこちら

恐れ多くもkogin.netの活動もご紹介いただいております!自由に読むことができるCreative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止として公開されているので是非、読んでみてください。

菱刺しとこぎん刺しの違いについても考察されています!
現在は一般公開されていないそうですが、こちらで紹介されている伝説の「西野こよ菱繍館」も行ってみたいな〜!!https://core.ac.uk/download/pdf/268252311.pdf

津軽こぎん刺しと南部菱刺しの違い

先日、SNSでもこぎんと菱刺しの違いをメモとして書き出してみたので、さらに詳しく解説してみたいと思います。


弘前藩と南部藩

江戸時代から明治頃にかけて現地への来訪者や藩日記などの文献に登場し始める青森の刺し子は、のちの研究によって地域ごとに刺されている模様やレイアウトが違うことが発見されて、こぎん刺しは【西こぎん】【東こぎん】【三縞こぎん】、南部領のものは【南部菱刺し】と呼ばれるようになりました。

稲作と畑作

こぎん刺しの刺されていた地域は稲作が多い地域で、年貢がお米の時代は現金と同じ価値があり藍染も贅沢にできたため濃紺まで染められたそうです。西こぎん発祥の地といわれる西目屋村のよう炭焼きを生業にしていた地域は、炭スゴとお米を交換していたという記録も文献に出てきます。対して、畑作の多い地域の南部では藍染の回数を減らして浅葱色にすることで節約していたのです。
ただ、どちらも食べるのに必死な身分では作る時間も外注で染める経済的な余裕もないと考えられるので、比較的自由のきく実家暮らし+嫁入り前の娘たちが懸命に作り、嫁ぎ先の状況に応じて続けられる人、忙しくて刺せない人もいたと思われます。

『津軽こぎん刺し』の特徴

津軽こぎん刺しは
濃紺の藍染麻布に生成一色の木綿糸で刺す

文献によると、初期は麻布に麻糸で刺されていたそうですが現在残ってい古作は木綿糸がほとんどです。珍しいものでは絹糸で刺された古作も存在しています。

◇奇数目、縦長菱

1、3、5、と奇数目を数えて刺すこぎん刺しは、単位模様を見ると一段で2目づつ増えていきます。菱刺しは4目増えるのに対して2目なので模様が縦長に。例外として、一部のモドコやソロバン刺し、模様の区切りに使われる竹の節には偶数も多くみられます。

また、自家製麻布は繊維が硬く手織りでは機械のような力を加えられないため、布目自体も縦長になっており古作こぎんに刺された模様が縦長菱になっております。布目が1:1に近いコングレスなどに刺すと正方形に近い菱形ができます。

◇モドコ

こぎん刺しでは単位模様を「基(もと)になる模様」からモドコと呼ばれています。

◇流れ模様有り

モドコを囲むように入っている模様を『流れ模様』と呼び、古作の着物には流れ模様を大胆に使って差別化しているものが多いです。


『南部菱刺し』の特徴

南部菱刺しは
浅葱色の藍染麻布にカラフルな毛糸で刺す

こちらは前ダレ(今でいうエプロン)に刺されていた模様の分類で、タッツケと呼ばれる作業ズボンには浅葱色に黒と白でストライプに刺されたものが多いです。

◆偶数目、横長菱

菱刺しの単位模様は2、6、10、と一段ごとに4目増えていくので、こぎん刺しよりも横長になります。

◆型こ

菱刺しでは単位模様を型こと呼ぶそうです。

流れ模様無し

上の参考写真を見ると、型この色変えで大胆な枠模様を作っていることがわかります。タッツケなどには2目や4目の『糸流れ』のようなシンプルな囲み模様が入ったものもあります。


必見!雪の炉辺に刺す(相馬貞三)

奇数偶数に関しては、青森の民芸運動を牽引した相馬貞三さんの文章も必見です。つがる工芸店のWebサイトで公開されています。

雪の炉辺に刺す—津軽・刺こぎん、南部・菱刺に見る文様と繍技のドラマ 相馬 貞三

現状、判明している津軽こぎん刺しと南部菱刺しの違いをまとめてみました。古作の特徴なので、現在は材料が自由に手に入るようになり表現の幅が広がっています。また、個人的な見解も入っているため、さらに踏み込で調べたい方は文献などで調べてみてください!間違いがあれば訂正をお願いします。


こぎん+菱刺し模様の通帳

kogin.netで担当せていただいた青森銀行の通帳デザインでは、こぎん刺しと菱刺しが仲良く共存するデザインにしています。




青森の刺しこ着展 菱刺しの世界

幸運なことに、現在、青森市で古作の菱刺しが特別展示されております!2021年3月28日まであおもり北のまほろば歴史館(青森県青森市)にて令和2年度企画展「青森の刺しこ着展 菱刺しの世界」を開催中です。貴重な菱刺し40点が展示されているそうで、常設コーナーには古作こぎん刺しもあります。
緊急事態宣言中の東京からは行けないので、我慢がまん。。お近くの皆さんは貴重な機会なので、是非ともご覧ください!


【入場無料】こぎん発表会2021

今から青森へは行けないよ〜という関東圏の皆さんは、2021年3月27日のこぎん発表会(新百合ヶ丘産経学園)へ是非!


詳細はブログでもご紹介しております。

【入場無料】『こぎん発表会2021』3/27開催決定!!※入場予約制

当日、会場でお会いできることを楽しみにしております。

kogin.net主宰 山端 家昌(ヤマハタ イエマサ)

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